マーメード


「・・・海に行かないか」

アスカがいなくなり、時折見せるらんるの悲しい笑顔。俺はそれを見たくなくて言った言葉。

らんるは驚いた表情で俺を見ている。俺は有無も言わせずにらんるの手をひっぱり車に乗せ、アクセルを踏んだ。



「・・・相変わらず強引だね」

車を走らせてしばらくしてそういってらんるは小さく笑う。・・・そうかもしれない。

でもそうでもしないと来ない様な気がして・・・・。

「・・・悪かったな」

俺は横目でらんるを見ながら謝る。らんるは首を振り

「・・・ううん、ありがとう・・・」

俺はその言葉に少しだけ嬉しさを感じ、車のスピードを上げる。



俺達が海に着いたのは、午後もかなり遅い時間。あと少しで夕暮れを迎える時間だった。

この季節、海にはもう誰もいない。とても静かだった。

俺達は車から降りて、波打ち際を何を話す訳でもなく歩く。

らんるは突然しゃがみこみ、手を海水につける。

「・・・やっぱり冷たい」

らんるは俺を見上げ、寂しく笑う。らんるがとても遠く感じる・・・。

俺はつい、らんるの手を引っ張り自分の胸に引き寄せ抱きしめる。

「どうしたの?幸人さん」
「・・・なんだかお前が海に消えていくような気がして・・・」

俺は抱きしめている腕に力を入れる。

「・・・私は人魚姫じゃないから消えないよ」

俺はその言葉に腕の力を抜く。らんるは俺から放れる。

「・・・私は好きな人の為に死ねなし、自分の幸せの為に殺せない。一緒に生きて行きたいの」
「・・・らんる」
「・・・だから私を放さないで。しっかり捕まえていて」

らんるはそう言うと俺に手を差し出す。俺はその手をしっかりと握る。

「俺も放さない。絶対に・・・・」



俺達は堤防の上に移動し、夕日が落ちるを見ていた。

「・・・今度はアスカさんとマホロさんと見に来ようね」
「・・・そうだな」
「・・・早く帰ってきてほしい」

俺はその言葉に少しだけ引っかかる物を感じ、つい聞いてしまう。

「・・・らんる、もしかしてアスカのこと・・」
「・・・そんなんじゃない。そういう感情なんかじゃない。純粋に帰ってきてほしいと思うだけ・・・マホロさんのためにも」
「・・・・信じていいんだな?」

「私の好きなのは幸人さんだけ・・・信じて」

らんるは目に涙を溜めて俺を見つめる。俺はその目を見て一瞬でも疑った自分を恥じた。

「・・・悪かった・・信じる」

俺の言葉にらんるに笑顔が戻る。俺も笑顔になりそのままらんるに口付けを落として抱きしめる。

「絶対アスカ達と来ような」

「・・・うん」

俺とらんるは完全に夕日が落ちるまでただ抱き合っていた。




ちょっとシリアスに・・・。
冬の海って夏と違って荒々しくってなんだか好き。
それで書いてみました。