その天使は突然俺達の前に舞い降りた・・・。



−未来の天使−



夕暮れ時、幸人とらんるは買出しの帰り、銀杏並木を歩いていた。
その通りは銀杏の葉のじゅうたんが敷かれ、黄金色の世界を作りあげていた。
二人がその通りの真ん中ぐらいまで通りかかると突風が吹き、あたりの落ち葉を舞い上げた。
風が止み、幸人とらんるは伏せていた顔を上げると少し離れたところに少女が立っていた。
その少女は誰かを捜しているよう様にあたりをきょろきょろしている。
しばらく二人はその少女の様子を見てたが、泣き始めたを見て慌てて駆け寄る。

「どうしたの?迷子になっちゃったの?」

らんるはその少女に視線を合わせるようにしゃがみこんで顔を覗き込む。

「パパ・・・ヒック・・・・ママ」
「名前は何だ?」

らんるの少し後ろで少女に声を掛ける幸人。

「・・・あしゅか」
「そっかあすかちゃんっていうんだ。
おねえちゃんがあすかちゃんのお父さんとお母さんを捜してあげるから  もう、泣くのよそうね」

らんるがやさしく声を掛けるとあすかは俯いていた顔を上げ、二人を見上げる。

少女の顔は見る見る笑顔になり、らんるに抱きつく。

「ママ!!」

幸人とらんるは驚きの表情で顔を見合わせる。 「おい、明日香。こいつはお前のママじゃないぞ」

幸人があすかに声をかけると、らんるから放れ今度は幸人に抱きつく。

「パパ!!」
「・・・・おい」

抱きつかれた幸人は助けを求めるようにらんるをみる。

「きっと寂しくって私たちをパパとママに間違えたんだよ」
「・・・・しょうがないな、どうする?」
「どうするって・・・・とりあえず恐竜やに連れて行く?」
「それはまずいだろ」
「でも、幸人さんから離れようとしないじゃない」
「・・・・」

二人が明日香をみるとあすかは必死に幸人にしがみついていた。

「・・・わかった、舞にでも遊ばせておいてその間に見つけるか」
「そうだね。明日香ちゃん、これからお姉ちゃん達と一緒にお店に行こうね。
 その間にパパとママ見つけてあげるから」

「うん!!ママ」

らんるが差し出した手を取るとあすかは幸人の手を取った。
三人は手を繋いでまるで親子のように並木道を恐竜やに向かって歩いていった。



「おっかえりなさいって・・・この子誰?」

凌駕は店に戻ってきた幸人とらんるの間にいる明日香を指差す。

「帰りに見つけた迷子なの。幸人さんから離れなくて・・・」
「へえ〜そうなんだ。こんにちは、お名前は?」

子供には慣れている凌駕は腰を屈めて名前を尋ねる。

「あしゅか。さんじょうあしゅか」

明日香の答えた名前に皆の視線が一斉に幸人に向けられる。

「三条って・・・」

驚きの顔の凌駕。

「そうなの?幸人さん」

少し涙目のらんる。

「ばかよせ、俺に子供がいるわけがないだろ」

困惑顔の幸人。

「そ、そうですよね。それで明日香ちゃん何歳?」

凌駕は再び明日香に質問をする。

「しゃんさい(三歳)」

「そうなんだ、あ、うちにも舞ちゃんっていうお姉ちゃんがいるから遊ぼうね、まいちゃーん」

凌駕は舞を呼ぶと、今まで奥にいた舞が凌駕の元にやってくる。

「なーに?りょうちゃん」
「この子、明日香ちゃんって言うんだ。一緒に遊んでくれるかな?」
「うん、いいよ。あたし、白亜舞。一緒に遊ぼうね」
「うん!!」

明日香は同年代の舞を見て、ほっとしたのか笑顔になり大きな声で返事をした。

「じゃ何して遊ぼうか」

マホロが手を取り合った二人を座敷に上がると、みんなでお絵かきを始めた。



「・・・で、どうするんですか?」
「そうだよね。もうすっかり日が暮れちゃったし・・・・」
「・・・しょうがないだろ、ここで預かって明日朝からあの子の親探しだ」

大人3人が輪を作って話し合いをしていると

「パパ!ママ!」

明日香が声を幸人とらんるに声をかけてくる。

「パパ、ママって・・・」
「違うよ凌駕さん。明日香ちゃん私たちをさっきからそう呼ぶの」
「・・・きっと寂しいんだろう」
「そうなんですか・・・でもあの子誰かに似てるんだよね」

凌駕は腕組をして遊んでいる明日香を見た。

「誰かって誰?」

らんるが尋ねると凌駕は首をひねり

「わかんないや」
「・・・・おい」

まるで漫才のような会話が交わされる。

「とりあえず食事の用意はじめましょ」

その後、何事もなかったように夕食が始まった。



疲れて眠ってしまった明日香を幸人がらんるのベッドに連れて行く。

舞から借りたパジャマにそっと着替えさせ、布団をかける。 「かわいいね、明日香ちゃん」
「・・・ああ、しかし肩が凝った」

幸人が肩を触りながら首を回すを見るとらんるは苦笑する。

「あのくらいで肩が凝るんじゃほんとに子供が出来たら大変ね」
「・・・今から思いやられるな」
「・・・お休み、明日香ちゃん」

らんるは明日香の額にキスをすると二人は部屋の明かりを消して出て行った。

「・・・ママ・・・パパ・・・」



次の日・・・。

幸人とらんるは明日香を恐竜やに残し、両親を捜していた。

「だめね、見つからない」
「・・・ああ、明日香を連れてきた方がいいな」

二人は一旦店に戻り、明日香を連れて彼女を見つけた場所へと移動した。



二人は明日香と手を繋いで、昨日逢った場所に着く。すると明日香は二人の手を放して走っていってしまう。

「明日香ちゃん!!」
「明日香!」

二人が明日香を追いかけようとした時、昨日と同じような突風が吹き、周囲の落ち葉を舞い上げる。
風が収まり二人は顔を上げるともうそこには明日香の姿はなかった。

「明日香ちゃん!!」

らんると幸人は明日香が立っていた場所に行き、明日香を捜す。
幸人は落ちていた何かを見つけ拾い上げる。

「らんる!!」

幸人が離れて捜していたらんるに声をかけると、らんるは幸人に駆け寄る。

「どうしたの?幸人さん」
「・・・見てみろ」

幸人に渡された物を見て、らんるは驚く。

「・・・・これって」
「・・・ああ、これで俺達をパパ、ママって呼んだか説明がつく」

幸人に渡された物は写真。そこには明日香とその両親が写っていた。

その両親の顔は数年後であろう幸人とらんるの姿だった。

らんるが写真の裏を見るとこう書いてあった。

『20XX年 明日香 3歳の誕生日 愛を込めて 幸人・らんる』

らんるはその写真を胸に抱きしめる。

「俺達は俺達の子供に引き合わせてくれたアスカの名前をつけているんだな」

らんるは幸人の言葉に無言で頷く。

幸人はらんるの肩を抱き

「未来のあの子達の為にも頑張んなきゃな」
「うん!!」

らんるは笑顔で応えると、また突風が吹く。
その突風に持っていた写真は舞い上がる。

「あ、写真・・・」

写真を追おうとするらんるを幸人は止める。

「あの写真は持っていたらいけないんだ」

その言葉にらんるは無言で頷き、飛んで行く写真を見送った。


・・・未来の天使達を守る為の闘い・・・

・・・でも今は愛する人の為に闘っていく・・・




廉さんから頂いたリクSS。
お二人のお子さんの名前、色々考えたのですがやっぱりこれしかないでしょう(笑)