お江戸物語(仮)第七弾 〜告白そして別れ


お江戸物語(仮)7〜告白そして別れ



「りょうちゃん、ひめねえさまげんきになったかな」
「もう大丈夫だと思うよ。昨日はいろいろあったからお疲れになっただけだよ」

次の日の朝、いつもの様に出仕してきた凌駕と舞は廊下を歩いていた。

「凌駕さ〜ん」

らんるに仕えている笑里が血相を変えて廊下の向こうから凌駕に向かって走ってきた。

「どうしたの?えみぽん」
「らっ、らんる様が・・・」
「らんる様がどうしたの?」
「いらっしゃらないの」
「え!?ほんとうなの?」
「今、朝食をお持ちしてお部屋に入ったらいらっしゃなかったです」
「捜した?」
「もちろん、城中捜しました。でもどこにもいらっしゃらなくて」

半べそで訴えてくる笑里の肩を凌駕は持ち、覗き込む。

「えみぽんはアスカさんと三条殿にお知らせしてきて。
 そしてらんる様のお部屋に来るように言ってきてください」
「わかりました」

笑里はアスカと幸人の部屋に、凌駕と舞はらんるの部屋と走っていった。



凌駕はらんるの部屋の障子を開ける。
そこに見たのは争った様子もなく、整然とした部屋だった。

そこにアスカと幸人がやって来た。

「凌駕さん、姫様が・・・」
「アスカさん、三条殿。見てください」

凌駕は二人に部屋を見せる。

「凌駕、どういうことだ?」
「争った様子がありません」
「と言うことは?」
「あのトップが姫を連れ去ったか、それとも・・・」
「自らのお意思でと言うことですか」
「そういうことになります」
「どちらにせよ、早く捜し出さなければ」
「しかし、どちらに・・・」

三人はらんるの行き先など見当も付かず、途方にくれようとしていた。

「・・・幸人さん」
「!?」

一瞬、三人は身構え、刀に手をかける。
すると木の陰からケラトが姿を現す。

「脅かすな、ケラト」
「すいません。主人から伝言ですケラ」
「なんだ?」
「らんる様のことですケラ」
「!?」
「らんる様はプテラのところにいらっしゃいます。心配なさらないようにとのことですケラ」
「・・・わかった」

三人は一同に胸をなでおろす。

「幸人さん、姫をお迎えに行ってくれませんか?」
「なぜ、俺が・・・」
「私たちではきっとお戻りになりません」
「お願いします」
「・・・わかった。ケラト行くぞ」



幸人とケラトはプテラの店にやってきた。
二人が中に入ると、プテラが出迎えた。

「幸人さん、らんるどうしたプラ?」
「どうしたって・・・」
「夕べ遅く泣きながらやって来て、ここにおいてほしいって・・・」
「で、らんるはどこだ?」
「奥にいるプラ」
「奥だな」

幸人はらんるのいる奥の部屋に行こうとするとプテラが肩に手をかける。

「幸人さん、らんるを怒らないやってプラ」
「・・・怒りはしない」

幸人はプテラの言葉に返事をし、部屋に向かった。



幸人が障子を開けるとらんるがじっと座っていた。
横にある布団に目をやるが眠りに付いた様子はない。

「・・・らんる」

その声に気付いたらんるは立っている幸人を泣き払った顔で見上げた。

「・・・幸人さん」

幸人は部屋の中に入り、らんるの腕を掴み引っ張る。

「・・・さあ、帰るぞ」
「いっ、いや・・・放して」

・・・パシッ・・・

必死に抵抗するらんるの頬を幸人は叩く。

「・・・すまない」

幸人はらんるの眼差しに耐えかね、背を向ける。

「・・・城に帰るぞ」
「いや・・・」

らんるは幸人の背中に抱きつく。

「城になんて帰りたくない。このまま私をどこかに連れて行って・・・」
「・・・何を言っているんだ」
「・・・・私は・・・私はあなたの事が・・・」
「!?」
「あなたの事が・・・」
「お戯れを・・・」
「私は本気です」

幸人は彼女が本気だと直ぐにわかった。でも、自分の心がまだ見えない。
だから、今はこんな言葉しか出ない。

「・・・・放してください、姫様」
「!?」
「私はただの使用人です。姫様がその様な男にこんな事を軽々しく言ってはいけません」

・・・俺は使用人なんだ。姫の気持ちを受け入れるわけには行かない・・・

幸人はらんるが自分から離れたのがわかるとらんるの方を振りかえる。
らんると目が合う。心が痛い。
らんるの気持ちを受け入れたい気持ちと受け入れられない現実。
幸人の心はズキズキと痛む。

「・・・皆が心配してます。戻りましょう」
「・・・・わかりました」

らんるの抑揚のない言葉が幸人の心に氷の矢の様に突き刺さる。



らんると幸人は城に戻ると玄関には皆と一緒に仲代壬琴も待っていた。

「らんる姫、心配したぞ。急にいなくなられて・・」
「・・・壬琴様」

壬琴はらんるの腰に手を回し、中に入るように促す。
そして幸人の方をにやりと見る。

「お前が姫をたぶらかして城の外へ連れ出したのか」
「ちっ、違います。それは私が・・・・」
「そうだ、俺が姫を城の外へ連れ出した」

幸人はらんるの言葉をかき消すように壬琴の理不尽な言葉に答えた。

「やはり、そうか・・・」
「・・・幸人さん」
「では、このような悪い使用人は要りませんね、らんる姫。
 三条、今すぐこの城から出て行け!」
「「「!?」」」
「・・・わかりました」

幸人はらんる達の間をすり抜け、部屋へと戻っていった。



幸人が部屋で荷物を整理していると、障子の向こうに人の気配を感じる。
直ぐに誰だかわかった。しかし部屋に招き入れることはできない。

「この部屋には入らないほうがいい」

幸人は手を止めることなく障子の向こうのらんるにいった。

「・・・・ごめんなさい」

そういい残すとその場から去っていった。

入れ違いのように今度はアスカが幸人の部屋を訪ねてくる。

「幸人さん、直ぐに長崎に帰るなんていいませんよね」
「そのつもりはない。どうにもあいつが気になる」
「姫様ですか?仲代様ですか?」
「どちらもだ」
「そんなことより城を出たらブラキオ屋にいてください。
 なにかあったら必ずお知らせします」
「ああ、そうしてくれ」

幸人はその日のうちに城を去っていった。



幸人は城を去ってから数週間ブラキオ屋に居候をしていた。

幸人は自分に与えられた部屋で寝そべりながら鈴を見ていた。

らんると初めて逢ったときに拾った鈴。
リンと鳴らすたびにらんるの笑顔を思い出す。
彼女への想いは募っていく。

昨日、アスカが幸人の所を訪れ城の様子を話していた。

『城から笑い声が消えました。姫も心がない人形のようです。
 そんならんる様を見ていていたたまれないです。顔色も紅色から青白くなられてしまった』

こんなにも近くにいながら助けることができない自分が歯がゆい。

そんなこと思いながら鈴を見つめ、懐にしまおうとした時障子の向こうがバタバタと騒がしくなる。
幸人の部屋の障子が勢いよく開く。
そこに立っていたのはアスカだった。

「どうした?アスカ。血相を変えて」
「幸人さん、らんる様が倒れられた」




ついに告白です〜
これからどう展開していくか、楽しみvv