救い・・・そして


あの事件から数日たった。

らんる何事もなかったように日常を過ごしていた。
しかしふとした瞬間、悲しい表情を見せることがあった。幸人はその表情を見逃してはいなかったが
どうする事もできず、ただ見守ることしかできなった。


そんなことが続いたある日。

店には幸人とらんる、二人きりだった。
いつものように二人は店の仕事をこなしている。
そこには静寂な時間が過ぎていった。らんるは洗い物をしていたが、突然洗っていた皿を落とす。
らんるに背を向けて仕込みをしていた幸人は、皿の落ちた音で振り返る。
そこにはシンクに手を掛け座り込んでいるらんるの姿があった。
幸人はらんるの身体に手をかけ支える。

「どうした?」
「・・・なんでもない・・・」

らんるは蚊の鳴くような声で答えた。

「うそをつくな」

幸人はらんるを抱きあがると店の座敷に連れて行き、横にさせた。
らんるの顔を見るといつもの桜色の頬が 青白く変わっていた。

「・・・寝ていないのか?」
「・・・うん、眼を閉じると怖くて・・・心配かけてごめん」
「・・・いや・・・」

幸人はらんるの頬に自分の手をそっと添える。
らんるは添えられた手に自分の手を添える。

「・・・・」
「・・・もう大丈夫・・・・」

そう言いながら起き上がったらんるを幸人は抱きしめる。

「・・無理をするな・・・泣きたい時には泣けばいい。俺が受け止めてやる」

らんるはその言葉で堰を切ったように幸人の胸の中で泣いた。



らんるは泣き終わると顔を上げ、薄い笑顔を浮かべる。

「・・・・ごめん」
「・・・いや」

幸人は慈しむような表情でらんるの頭をなでる。
らんるは幸人の腕からでると靴を履こうと縁にすわる。
幸人に背を向けたまま

「・・・こんな女嫌いになったでしょ」
「!?」
「もう私なんか嫌いになったでしょ?」
「そんなことはない」
「いいよ、無理しなくて・・・」
「無理なんか・・・」
「うそ・・・だって私は・・・私は・・・あいつに・・・」

らんるの肩はわなわなと震えていた。
幸人はらんるを背中から抱きしめる。

「もう言わなくていい・・・俺はお前が好きなんだ」
「・・・・・」
「ほかの物を失ってもお前だけは失いたくない・・・」
「・・・・・」

幸人はらんるの顔を強引にこちらに向かせ、長く深い口付けをした。
らんるの頬には一筋の涙が零れた。
幸人はらんるの涙に気付き、唇を外す。

「・・・悪かった、お前に気持ちも確かめないで・・・」

らんるは無言で首を振った。

「・・・もう少しこうしていていいか?」
「・・・もう少しこうしていて・・・」

二人は心の中でお互いの存在を確かめ合うように抱き合っていた。



その頃、壬琴は先日らんるを抱いたベッドに横たわっている。
らんるのストラス系のオーデコロンの香りが残ったベッドに。

「ここにいると、また君を抱きたくなるよ」

壬琴はワインをごくりと飲み干すとにやりと笑い

「君の身体も俺を忘れられなくなっているさ、ふふふ・・はっはっは・・」

壬琴は持っていたグラスを壁にたたき付けた・・・。




えっと、『絶望』が尻切れトンボのように思えたので書きました。
あまりに救いようがなかったので・・・ってこれも救いようがないような気がしますが(汗)
これで、ほんとにとりあえず止めようと思ってます。どんどん深みにはまってしまってます。
最後には誰か死ななきゃ終わらないよ