Fragile heart


メルザードとの戦いも終わり甲平は無事卒業式を迎えることができた。
卒業式に出席したビーファイター達はそれぞれ帰路についていた。
健吾は謝恩会に出席する甲平に頼まれ、ゆいを家へ送り、 マック、ソフィア、李はホテルへと向かう。
フリオは蘭を彼女のマンションまで送ることになった。


2人は微妙な距離を保ちながら、蘭のマンションへと歩いて行く。
お互いの手が触れそうで触れない距離。
しばらくしゃべらずに歩いていたが、2人はほぼ同時に言葉を発する。

「ねえ」「なあ」

お互いの言葉で驚いた顔で見合す。目が合った瞬間、照れてしまいお互い視線を外す。

「なに?フリオ」
「いや別に・・蘭どうした?」
「ううん、たいしたことじゃないの。フリオからどうぞ」
「いや、蘭から」

このままでは話が進まないと思った蘭は後ろで手を組み、花が咲いたような笑顔でフリオを見上げる。

「長かった戦いがやっと終わったなぁと思って」
「俺も同じ事を言おうと思った」

フリオは優しい笑顔で蘭を見る。お互いを見詰め、くすくすと笑い出す。
笑いも収まり、 蘭は不安げに俯き加減でフリオに尋ねる。

「ねえ、フリオ。またすぐに南米支部に帰ってしまうの?」
「いや、今回は戦いが終わったから少し長く休みを貰えた。
でも、その間に報告書を書かなくてはならないが」

蘭はその言葉に明るくなった顔を上げ、フリオの顔を見る。
フリオもはにかんだ笑顔で 蘭を見ていた。

「じゃあ、今度こそ日本を案内してあげる。フリオどこ行きたい?」

蘭はおもむろにフリオの両手を持ち、くるくると回る。フリオは苦笑する。

「蘭、目が回ってしまう」

蘭は慌てて止まり、

「ゴメン」

と舌を出す。フリオは蘭を少しだけ引き寄せ、優しい笑顔で言う。

「蘭が行きたい所へ連れてってくれ」
「でもそれじゃあ・・」
「俺はその方がうれしい」

蘭は少し顔を赤くし片方の手を外し、正面を向き繋いだままのフリオの手を引っ張り気味に、歩いていく。
そして振り返りざまに笑顔で言う。

「じゃあ、これから食事なんてどう?」
「いいね。とてもおなかすいていたから俺もそう言おうと思った」
「あ、またおんなじこと考えた♪」

蘭とフリオは声を上げて笑いあった。

お互い手を離すことなく、街へと消えていく。


遅めのランチを取り、二人は久々にゆっくりと街で遊んだ。
この一年、遊んでいても頭から戦いのことが離れず、楽しんだことなど無かった。
何もかも忘れて遊ぶことができることがお互い何よりも幸せに感じていた。

夜も更け、フリオと蘭は彼女のマンションに来ていた。
蘭はドアの鍵を開けて、扉を開け後ろにいるフリオに笑顔で言う。

「上がって、お茶入れるから」
「今日はここで・・・」

フリオはやんわりと断る。
蘭は残念そうに『そう』と言って、フリオの方を向きドアを後ろ手で閉める。

「今日はつき合わせちゃってゴメンね、フリオ。疲れちゃったでしょ」

と蘭は舌を出す。そんな蘭を見てフリオは笑顔で首を振る。

「いや、とても楽しかった。」
「ほんと?」
「ほんとだ。ずっと蘭と一緒だったから」

その言葉を聞いた蘭は顔を赤らめ、俯く。
フリオも無意識でいった言葉に蘭がそのような反応を示したので、急に恥ずかしくなり、はにかむ。
しばらくの間、2人の間を沈黙が支配する。

「じゃあ、本当に有難う、フリオ。」

蘭は後ろ手でかちゃと扉を開けて惜しそうな顔でフリオの顔を見る。

「こちらこそ有難う」

フリオ寂しい笑顔で蘭の顔を見る。
蘭はフリオのそんな顔を見たくないとばかりに、さっと身体を扉の方へ向ける。
中に入ろうとした時フリオの優しい声が自分を呼ぶ。

「?」

蘭は不思議そうな顔で小首をかしげて、フリオを見る。
フリオはおもむろに蘭の細い肩を両手で持ち、蘭の額にそっと優しい口付けを落とす。
「お休み、蘭。また明日」

フリオは赤面しその一言を残して、その場を離れる。
蘭は呆然としたまま何も言えなかった。

我に返った蘭はエレベーターの方へ向かっているフリオの背中に声を掛ける。

「お休み、フリオ。また明日」

フリオは振り返らず手を上げ、角を曲がっていった。
蘭は先ほどの事を思い出し、 ふふふと小さく笑いながら扉の中に消えていった。




このお話はフリオv蘭同志であります高村彬嬢に捧げたものです。
高村嬢はビーファイターカブトのコピー本を出されていて、その魅力に一気に引きずり込んでいただいた方であります(感謝)
ご本を買わせて頂いた御礼に書いたものですv題名もつけべたのゆうこのわがままを聞いてくださって付けていただきました(多謝)