TE QUIERO 〜テ・キエロ〜


フリオが日本に滞在してはや一ヶ月。
上司から『長い戦いが終わったから好きなだけ日本に滞在していい』といわれ、 フリオはその言葉に甘えた。
そして明日はフリオの特別休暇が終わり、帰国する日であった。

明日帰国することは蘭以外の人間には知らせていたが、
フリオは他に人間には 『蘭には自分で言うから黙っていてほしい』とお願いしていた。
しかし蘭の顔を見るとそのことを言えず、帰国前日になってしまった。

フリオは翌日の帰国の為、コスモアカデミア日本支部に別れの挨拶に来ていた。
そこには蘭の姿は無く、フリオは残念と思いつつほっとしていた。
小山内博士、健吾、ゆいと別れの挨拶を交わす。
ゆいは『またすぐに来るんでしょ』と冗談混じりにフリオに言う。
フリオはその言葉に苦笑し、健吾達に『戦いが終わったからしばらくは来日できない』と寂しい笑顔で言った。
みんなは残念そうにフリオの顔を見た。おもむろに健吾が口を開く。

「蘭には言ったのか?」

フリオはその言葉に表情を曇らせ俯いて首を振る。

「今日会えたら言おうと思った。でもいないからしょうがない」
「そんな・・・・」

ゆいは蘭の悲しむ顔を思い浮かべ、いたたまれなくなった。


同じ頃、蘭は司令室の扉の外でその会話を全て聞いていた。
フリオが来ていると聞いて、急いで戻ってきていたのだ。
入ろうとしたとたん、フリオ達の会話を聞こえてきて中に入るタイミングを外してしまいただ俯いていた。

フリオは明日の準備があるといい、司令室を出ようと扉まで来た。
扉が開いたとたん、視界に入ってきたのは目に涙を溜めた蘭の姿だった。

「蘭・・・・」

フリオは突然の出来事に何も言えずにいた。
ただ、自分のせいで涙を溜めてしまった 蘭の大きな瞳を見詰めるだけ・・・・。
蘭はじっとフリオの顔を睨み、そのままどこかへと走っていってしまった。

「蘭!!」

フリオは反射的に蘭の腕を掴もうとするができず、後を追い駆ける。


蘭はコスモアカデミアを飛び出し、無意識に思い出の木に来ていた。
フリオが自分に意見し、自然のすばらしさを教えてくれた場所・・・・
蘭は涙が零れないようにじっと上を向いていた。

『何時ものことなのに・・・フリオが帰ってしまうのは。
いつも平気なのに・・・なぜこんなに悲しいの』


フリオは蘭を探していた。

『蘭、どこだ。こんなことになるなら早く言えばよかった。
でも蘭の涙は見たくなかったから・・・
このまま帰国して蘭の涙を見ずにすめばいいと思ったから・・・ずるい男だな』

フリオは思い出したようにあの木に向かった。


フリオが息を切らせながら木の下へと近づて行った。
近づく途中息切れを起こしてしまったフリオは膝に両手をつき 呼吸を整えた。
下を向いていた視線を木の方に向けるとそこには木に寄りかかって上を見ている蘭の姿がある。
フリオはその姿を見てほっとし、蘭に気付かれないように彼女の背中に近づく。

「蘭」

蘭はフリオの声に一瞬びくりと身体を揺らしたが、
視線を上から正面に見据えふりかえらず、無言のまま寄りかかって立っていた。
フリオは一歩、蘭の背中に近づき謝った。

「ごめん、蘭。帰国の事言わなくて・・・。
俺、君の涙見たくない・・・だから言えなかった」

蘭は小さな声で呟く。

「早く言ってほしかった・・・」

フリオには聞こえなかったらしく

「蘭、なんて・・・」

蘭はフリオの言葉をかき消すように、振り返り強い口調で言う。

「早く言ってくれれば、こんな涙を見せずに済んだのに」

蘭はフリオに抱きついて、声を上げて泣いた。
フリオはそんな蘭をただ抱きしめていた。

しばらくフリオの胸で泣いていた蘭は落ち着きを取り戻したらしく、
鼻をすすり上げながらフリオの顔を見上げる。

「・・・・すぐに戻ってくるんでしょ?」
「・・・・それはきっと無理」
「・・・・・・」
「だったら今度は南米(こっち)に遊びに来ればいい」

その言葉を聞いた蘭は花が咲いた様な笑顔になる。

「うん、絶対に行く!!」
「しばらくはお別れ、我慢できる?」

フリオは子供に聞くように蘭に聞く。

「ううん、我慢できない」
「俺も」

2人はくすくすと笑いあう。突然フリオは真顔になり、蘭を見詰める。
蘭は『どうしたの』といわんばかりにフリオの顔を見る。

「TE QUIERO(テ・キエロ) 蘭」

蘭は聞きなれない言葉を聞き、不思議そうな顔をする。

「フリオ、今言った言葉の意味は何?」

フリオははにかみながら

「愛している 蘭」

蘭はその言葉に一瞬驚き赤面したが、すぐに言葉を返す。

「TE QUIERO フリオ」

フリオと蘭はどちらともなく唇を合わせた・・・
2人は唇を離してもお互いの存在を確かめるようにしばらくの間抱き合った。

翌日フリオを空港で見送った蘭には涙は無かった。
飛び立つ飛行機を見詰めながら呟く。

「さあ、遠距離恋愛の開始だ!」

蘭が長い有給休暇を取り、フリオの待つ南米に旅立ったのはその出来事の一ヵ月後のことである。




ただチュウをさせたかっただけのお話。(爆)
この2人はかなり純情なので、まだ先でもよかったかなと思いましたが、させたかったのよ(涙)