あなたに包まれて
乾いた日差しを浴び、少し眩暈を感じながら空港を降り立った蘭の視界に迎えに来てくれた愛しい人フリオが入ってきた。
一ヶ月ぶりに見るフリオは自分が覚えているままのフリオで蘭は嬉しかった。
フリオは最初蘭を見つけられなくきょろきょろとしていたが見つけたとたん、明るい表情になり大きく手を振って蘭に近づいていった。
「オラ!蘭」
「オラ!フリオ」
フリオは蘭の小さな身体を力強く抱きしめる。
まるで空白の時間を埋めるように・・・
「やっと会えた」
2人がほぼ同時に発した言葉。抱き合ったままの2人は顔を見合わせ小さく笑う。
フリオは蘭の荷物を持ち、自分の車に彼女を導いた。
蘭を助手席に乗せると、市街地へと車を動かす。
行く途中フリオは蘭にこれからの予定を聞き出す。
「蘭これからどうする?」
「まず、ホテルにチェックインしなくちゃ」
「蘭はどれくらいいられる?」
「一ヶ月ぐらいかな」
「ホテル代勿体無い。俺の部屋、泊まればいい」
「え?」
蘭は困惑の表情を浮かべる。その表情を見てフリオは小さく笑い、
「大丈夫、蘭。部屋が一個余っているからそこ使えばいい。
その部屋鍵掛かるから」
蘭はそれならとお願いし、フリオの提案でコスモアカデミア南米支部へと行くことにした。
コスモアカデミア南米支部では蘭たちの先輩ビーファイターである羽山麗が体を休めることなく仕事に没頭していた。
フリオは蘭を伴って麗に元へやってきた。
麗は2人が入ってきたことさえ気付かず、コンピュータの画面と睨めっこをしていた。
フリオは苦笑しながらも麗に声をかける。
「麗、蘭が来たよ」
その言葉に麗は視線を二人に向けるが、まだ気付いていない様子だった。
視線を向けられた蘭は慌てて小さくお辞儀をする。
「初めまして」
麗はその言葉に我に戻り、慌てて席を立ち、笑顔で2人のそばに来る。
「こんにちは、蘭さん。戦いが終わってよかったわね」
麗は蘭の手を取り、そっと笑いかける。
「有難うございます。皆さんのお陰です」
「お役に立てて嬉しいわ、ね、フリオ」
フリオはその言葉に笑顔で頷いた。蘭は心配そうな表情を麗に向け、
「お仕事忙しいんですか?」
聞かれた麗は苦笑しながら答える。
「コンピュータのプログラムがちょっと変になってしまって・・・
そうだ、蘭さん見てくれないかな」
その言葉にフリオは子供をたしなめるように麗に言う。
「麗、蘭は俺のお客。そんな事させられない。
それにさっき日本から来たばかり。」
蘭は自分を心配してくれるフリオを『大丈夫』と制し、麗に笑顔で『はい』と答え、早速席につき作業を始める。
フリオは麗を『めっ』とした表情で見る。麗は舌を出して肩を上げ、謝る。
結局作業は夜までかかってしまった。
三人は麗のおごりで街のレストランで食事をしていた。
麗はワインを傾けながら
「有難う、これで明日から仕事が進むわ。明日からは楽しんでね」
「はい!!」
蘭は先輩から言われた言葉に笑顔で答える。
フリオは2人のやり取りを苦笑しながら聞いていたが、蘭の表情が冴えない事に気付く。
「蘭、大丈夫?疲れた?」
「う、うん。ちょっとだけね。でも大丈夫」
蘭は薄い笑顔で答える。麗も心配そうに蘭の顔を覗き込む。
「大丈夫ですって」
蘭は笑顔で両手を振り、否定をする。
「蘭さん、ホテルに戻るんでしょ」
「いや、蘭は俺の部屋に泊まる」
麗はその言葉に驚きの表情で二人を見る。蘭は慌てて言い訳をする。
「フリオの部屋であいている部屋があるというから・・・
それに鍵が掛かるって言ってましたし・・・」
「そう・・・まあフリオなら安全だけど・・」
麗は含み笑いをしながら二人を見る。
意味がわからないフリオは不思議そうな表情をし、解ってしまった蘭は赤面して俯いていた。
食事も終わり、部屋に戻るために車に乗る二人を見送る麗はそっと蘭を呼び止める。
麗は蘭の手を取り、口元を蘭の耳元へ持っていった。そしてフリオに聞こえないように囁く。
「こっちにいる間、フリオにうんと甘えちゃいなさい。」
蘭は笑顔になり、小さく『はい』と答えた。蘭は『じゃあ』と麗に軽くお辞儀をして車に乗り込む。
二人が乗った車は一路フリオの部屋へと出発した。麗は軽く手を振り、2人を見送り家路についた。
出発ししばらくしてフリオは少し疲れた表情を見せる蘭に話し掛ける。
「疲れただろ、蘭。」
「やっぱり、長旅は疲れるね。こちらに来る前にあらかた仕事を済ませてきたから・・
フリオはよく疲れなかったわね」
「使命があったからだと思う」
「そっか・・・」
「君・・達を助ける使命があったから・・・」
「・・・・・・」
フリオは何も答えない蘭の方を向くと、蘭は静かに寝息を立てていた。
フリオは苦笑し、子供のような寝顔の蘭を起こさぬように静かに車を運転した。
部屋についたフリオは姫抱っこしている蘭を用意していた部屋の簡易ベッドではなく、
自分が普段使っているベッドに静かに下ろし寝かせる。
寝ている蘭に毛布をかけるとフリオは天使を起こさぬようにそっと額にお休みのキスをして毛布を持って部屋を出る。
フリオはリビングのソファーで明日から蘭をどんな所を案内しようか考えをめぐられながら眠りについた。
朝、フリオは頬にやわらかい感触を感じ、目を覚ます。
そこには蘭の明るい笑顔があった。
「フリオ、おはよう」
「おはよう、蘭。よく眠れた?もう大丈夫?」
「うん♪ フリオ、ゴメンね。ベッドを取っちゃったみたいで・・・」
「大丈夫。蘭が眠れたならそれでいい」
「・・・・フリオに包まれているみたいだった・・・」
蘭は赤面しながら俯く。フリオははにかみながらそんな蘭を見詰める。
フリオはこの部屋ではめったにしないいい臭いに気付いた。
フリオはその出所を捜すため、きょろきょろしていると何時もは殺風景なテーブルの上においしそうな食事が乗っているに気付く。
「・・蘭・・あれ」
蘭はフリオが視線を向けている方を見て、照れ笑いを浮かべる。
「ベッドを取っちゃったお詫び」
「そんなことしなくてもいいのに・・・有難う、蘭」
フリオは嬉しそうに起き上がり、食事が乗っているテーブルに近寄る。テーブルの上には
焼きたてのトーストとベーコンエッグが湯気を上げていた。蘭は恥ずかしそうに
「たいしたもんじゃないけど・・・」
と言って、キッチンでコーヒーを2つ入れ始める。フリオは席につきながら、
「俺はいつも朝、コーヒーとパンだけだから、たいしたご馳走だよ」
と蘭の背中に言う。蘭もコーヒーを入れたカップをフリオの前に置き、自分も席に着く。
蘭は両手を合わせて笑顔で言う。
「いただきまーす」
蘭は昨日の疲れが嘘のように食べていく。フリオはコーヒーをすすりながら蘭を見て想う。
『蘭がいるだけでなんて暖かいだろう。こんな生活も悪くないな』
見詰められていた蘭はフリオに気付き、小首をかしげて尋ねる。
「どうしたの?やっぱり口に合わない?」
我に返ったフリオは慌てて首を振り、優しい笑顔で蘭に尋ねる。
「蘭、今日はどこ案内しようか?」
という事で前回の『TE QUIERO』の続きを書きました。蘭はお休みを取ってフリオがいる南米へ・・・
ここに登場してる羽山麗嬢はBFカブトの前番組『ビーファイター』でレッドルでしたが途中で南米に行かれました。
こういう設定でいいのかゆうこは見ていていないので解りませんが、『BFカブト』同志の高村嬢の設定を使わせて頂きました。
高村嬢、すいません(平謝)