服が濡れたら乾かしましょう
梅雨も明け、抜けるような青空の広がった日、フリオと蘭はキャンプ場の川原にピクニックに来ていた。
キャンプにはまだ時期が早かったのか、人はいなかった。
着いたがちょうどお昼ぐらいでもってきたお弁当を食べ、しばらく休んでいるとフリオは立ち上がり、蘭に手を差し伸べる。
「川に入ろう。さっき冷たくて気持ちよかったよ。さあ、行こう!!」
フリオは蘭の手を取ると引っ張って川のすぐ傍までやってくる。
フリオは靴を脱ぐとそのままバチャバチャと入っていき、まだ入っていない蘭の方を振り向く。
「さあ、早く!!」
「ちょっと待って、フリオ。」
蘭も座り込むと履いていたカーキ色のカーゴパンツの裾をひざまでまくり、靴を脱ぐと
恐る恐る川の中に入っていく。蘭は暑さから開放されたように
「気持ちいい!!」
と今度は水面をけったりしてはしゃいだ。
傍でフリオははしゃいでいる蘭の笑顔を眩しそうに目を細めて見つめていた。
蘭は物思いに耽っているフリオに気付くと、中腰になってフリオの顔をめがけて川の水をかける。
その水は見事にフリオの顔に命中した。
「フリオ!!何ボーっとしてるの?」
蘭は笑顔でフリオに言うと、フリオは顔にかかった水を手で拭うとにやりと笑い、
「よくもやったな!!」
「悔しかったらここまでおいでーだ」
蘭は舌を出してすばやくフリオから遠ざかるように逃げる。
フリオは水を蘭にめがけてかけると
「こら待て!!」
と蘭を追いかける。暫く二人の追いかけっこは続いたが、フリオの動きはすばやく、とうとう蘭の腕を捕まえる。
「捕まえたぞ、蘭」
「あーあ、捕まっちゃった」
お互い顔を見合わせて大笑いした。
笑いが収まるとフリオは急に真面目な顔になり、蘭を見つめる。
蘭は笑顔だったがフリオの真面目な顔を見て言葉には出さないが
『どうしたの?』という感じで小首をかしげてフリオを見る。
フリオは蘭の頬に張り付いた少し濡れた髪に手をすきいれるとじっと蘭の顔を見ていた。
「フリオ?」
フリオには蘭の言葉は耳に入っていなかった。
蘭はフリオのやさしい眼差しに自分でも耳まで赤くなっていくのがわかり
「フリオ・・・・・そんなに見られたら恥ずかしいよ・・・・」
蚊の鳴くような声で呟く。
フリオはその声にやっと我に帰ると触れていた手を慌てて外す。
蘭はやっとあの眼差しに開放され、赤くなった自分の顔を見られないようにフリオに背を向ける。
「ご、ごめん、蘭・・・・」
「ううん・・・・」
二人の間を流れる沈黙の時間・・・・
それに耐えられなかったのは蘭の方で、
「もう、あがろっか・・・・」
「・・・そうだね」
二人は短い会話を交わすとフリオは蘭の手をとって岸に上がっていった。
岸に上がった二人は冷えてしまった身体を温めてようと焚き火の傍に座る。
フリオは蘭の横でおもむろに濡れたシャツを乾かそうと脱ぐ。
蘭はその突然の行為にあっけに取られていた。
そしてフリオの鍛え上げられた上半身に一瞬目を奪われる。
蘭は今まで甲平・健吾に感じることなかった『男』をフリオに感じてしまい、
急に恥ずかしさがこみ上げてきて、耳まで赤くして目をそらす。
フリオは蘭の気持ちなど知る由もなく、急に顔をそらした蘭の顔を覗き込む。
「どうした?蘭」
蘭は言葉を出してしまえば自分の心臓が高鳴っている事を悟られると思い、
無言で俯いたまま首を横に振る。
フリオは蘭が急に無口になってしまった事を不思議に思いながら蘭を見ていると
彼女の白いシャツが先ほどの水遊びで濡れてしまった事に気付く。
「蘭、服を脱いで」
「え!?」
フリオの言葉に俯いていた顔を上げ、驚きの表情でフリオを見る。
「蘭の服も乾かさなきゃ、さあ、早く」
蘭は自分の服を見て、濡れて身体に張り付いているのにやっと気付く。
脱いでも着替えなど持っていない蘭は躊躇する。
「え、でも・・・・」
フリオは自分のかばんからブランケットを取り出し、蘭に手渡す。
「脱いだら、これを身体にかければ大丈夫。
俺は少し薪を拾ってくるから・・・」
フリオはやさしい笑顔でそう言うと、林の中に消えていった。
蘭はフリオのやさしさを感じ、手早く服を脱ぐと肩からブランケットをかける。
蘭は肩からかけたブランケットが落ちないように内側から持ち、
炎を眺めながらフリオが戻ってくるのを待っていた。
『急に裸になったからびっくりした・・・。フリオが戻ってきたらちゃんと顔見れるかな』
と顔を毛ブランケットの中にうずめて考えていると
「蘭、大丈夫?」
と声がかかる。振り向くと片手に薪を持ったフリオが戻ってきていた。
フリオは蘭の気持ちなどお構えなしに、どさっと薪を置くと蘭の横に座る。
蘭はやはり恥ずかしさの為、またブランケットの中に顔を埋めた。
「蘭、寒い?」
フリオは蘭がブランケットに顔を埋めているのは寒いからと思い、フリオなりに気を使って聞いてきた。
しかし蘭はただ首を振るだけ・・・。
フリオは何もしゃべらず自分の方を見ない蘭にちょっと意地悪をする。
「蘭、そこに蛇が・・・」
「きゃあ」
蘭は隣にいたフリオに抱きつく。蘭はフリオに抱きついた為ブランケットを肩から落ちる。
フリオは蘭の白い肩にどきりとしながらも落ちたブランケットを蘭にかけ直す。
「蘭、冗談だよ」
「え?」
蘭はフリオの胸の中からフリオの顔を見上げる。
そこにはフリオのやさしい笑顔・・・・
「もう・・・フリオ、嫌い」
蘭はフリオから離れようとするが、フリオは逆に離れないように蘭を抱き込む。
「ごめん、でも蘭がずっと話さず俺の方を見なかったから・・・・心配だった」
抱き込まれた蘭は先ほどより胸は高鳴っていた。顔も赤くなる・・・
「蘭、なぜ俺も見なかった?」
「・・・・・・・」
蘭は蚊の鳴くような声で理由を言う。しかしフリオには聞こえなかった。
「なに?蘭」
「・・・・フリオが裸になったから恥ずかしかったの・・・」
フリオは理由を聞いて一瞬驚いたが、すぐに笑いがこみ上げた。
「何で笑うの?」
「ごめん、蘭、かわいいと思って・・・・」
「また恥ずかしい事言う・・・」
フリオは蘭の向きを変え背中から蘭を抱く。
「これなら見えないだろ・・・」
「・・・うん、ありがとう」
「俺も蘭の格好を見た時ほんとは恥ずかしかった・・・」
フリオは呟く。蘭には聞こえなかったらしく
「何か言った?」
「いいや、早く服が乾けばいいなって」
「そうだね」
二人は服が乾くまでの間、燃え上がる炎を見つめていた。
久々のSSです。
二人でピクニックです。二人にはお似合いです。
最後の状況から行くと裏に行きそうなんですけど、行きません(きっぱり)
どうしてかというと、フリオが大人の男性だから(笑)
私のイメージだとフリオってそういうことって、きっちりけじめつけそうなんで
というよりも、この二人ではまだ書けないです。