桜の魔力
「ホージーさん!」
パトロール中のホージーにウメコから通信が入る。
「どうした?事件か?」
「すぐに南公園まで来て!」
ウメコは言い終えると一方的に通信を切ってしまった。
「今のはなんだったんだ?」
ウメコの通信に呆れる。が、やはり気になり、ホージーはドーベルマンを南公園へと走らせる。
公園までの道中、ホージーの心は穏やかではなかった。
ウメコに何か起きてないだろうか、そんな想いが心を支配する。
公園に着いたホージーはブルに寄りかかっているウメコの姿を見て、そんな事が取り越し苦労で終わった事に胸をなでおろす。
「・・・心配させやがって」
ホージーはヘルメットをかぶったまま思わず呟き、そのまま立ち止まる。
ウメコはホージーに気付き、笑顔で手を振るながら近づいていく。
「ホージーさん!!」
ホージーはバイクのエンジンを止め、ヘルメットを脱ぐ。
「どうしたんだ?」
「いいから来て」
呼び出された理由を聞こうとするホージーの手をウメコは引っ張り、無理やり公園の中に連れて行った。
「だから、どうしたんだ!?どこに行くんだ?」
「いいから、いいから」
手を引っ張られてわけもわからず歩いているホージーはウメコに何度も聞くが、帰ってくる答えは同じ。
ウメコに答えを求める事にホージーは半ば諦めた。そのとたんウメコが自分の方に振り向く。
「ホージーさん、ここ!!」
ホージーが目にしたのは、満開の桜並木。
何百本と並んでいる桜が空の青さを隠すように咲き誇っていた。
「すごいな」
ホージーは思わず感嘆の声を漏らす。
「でしょ、パトロール中見つけちゃって。一人で見るの勿体なって・・・」
「だから俺を呼んだのか?」
「そうでーす。それにちょうどお昼だし、一緒に食べようと思って」
そういうとウメコはコンビニの袋を差し出す。
「用意がいいな。でも俺が来なかったら無駄になっていたぞ」
「ううん、ホージーさんなら絶対来ると思ったから・・・・」
「え!?」
「ま、いいじゃない。さ、食べよ」
ウメコの言葉に唖然としているホージーは引っ張られるままベンチに座った。
食事をとり終わったホージーはベンチの背もたれに頭を乗せ、満開の桜を見上げる。
「・・・ウメコの色だな」
思わず呟いた言葉にウメコはホージーを見る。そして同じように見上げる。
「・・・ほんとだ、ホージーさんの色を隠してるね」
ウメコの言う通り、空は桜の花に隠されている。ウメコの言葉にホージーはくすりと笑う。
「・・・俺よりちっちゃいのな」
「それだけ私が偉大だってことかな」
「・・・・;」
ホージーは苦笑しながら隣に座るウメコを見つめる。
大きな瞳、桜色に彩られた口唇、凛とした表情。
桜とあいまってかわいいというよりきれいだと思う。
これも桜の魔力。
ウメコはホージーの視線に気付いたのか、こちらを見る。
にっこり笑うとだんだん顔が近づいて来た。
「!?」
ホージーが頭をそらすがまだ近づいて来る。
次の瞬間、ホージーの目の前に花びらをあった。
「髪の毛についてたよ」
「・・・・そうか、ありがとう」
内心どきどきしていたホージーだが表情に出さないように礼をウメコに言う。
が、まだウメコの顔を近くにある。
ホージーはウメコに半分本気の冗談を言う。
「・・・キスするぞ」
こんな事を言えば、いつもだったら絶対に怒ってくるウメコ。
しかし今日は違った。
「いいよ」
「!?」
ウメコの言葉に思わず狼狽するホージー。
「っていうのは冗談」
ウメコは笑顔で舌を出す。
「はい、お昼休みは終わり。パトロール再開」
ウメコは立ち上がるとホージーの手を取る。
「ホージーさん早く」
「ああ、いくか」
ホージーはウメコの手を握り返すと笑顔で立ち上がる。
桜の魔力で少しだけ短くなった二人の間の距離。
「ありがとよ」
ホージーの言葉に応える様に桜舞い散る中、二人は手を繋いだまま、ゆっくりとハスキーとブルへと向かう。
桜ネタです。
クリスマスとかそういうのには思い浮かばないのに
この時期だけはおもいうかんでしまうのです〜。
ちょっとだけ距離が縮んだかしら?
文中に出てくる「ハスキー」と「ブル」はそれぞれの愛車です。
ちなみに赤と黄が乗っている車は「ドーベルマン」です。