遊園地
「ねー、今度の日曜日、どっか遊びに行こう」
「どこへいくのだ?」
うーん、七海は顎に人差し指を当てながら考えている。
俺はショッピングだの映画だのといわれやしないかと内心ひやひやだった。
「そうだ!遊園地にしよう!!ね、決まり!!」
半ば強引に遊園地に決まった。あまり好きではなかったが、七海に言われれば行かなければならない。
もし断りでもすれば後が怖い。
日曜日の朝、七海と俺は遊園地の前にいた。そこには長蛇の列がある。何かの券をもらっているようだ。
「七海、何だこの長蛇の列は?」
「ヒーローショーの整理券もらう為にならんでるんだよ」
「ヒーローショー?」
「そう、すごく人気があるんだよ。実は私もこれが見たくて一鍬を連れて来たんだ♪」
七海は俺の腕を引っ張り、列に並び始めた。
「なあ、こういうものって、子供が見る物じゃないのか?」
「昔ね、今は、大人の人だって見るんだよ。ほらね」
七海はあたりを見回す。つられて俺も見回す。本当だ。
「特に今日は素顔の役者さんが出る日だから。」
「素顔の役者?」
「そう、変身する前の人たちが出演する日だから大人が多いの。
私も素顔の役者さんが見たかったから。ほら一鍬、あの人かっこいいでしょ。」
七海は近くにあったポスターを指差す。横目で俺もポスターを見る。
小声で分からないと言ったら七海はこの髪の長い人といって、役者の顔を指差す。
俺はなんだかジェラシーを感じてしまった。そんな話をしている間に俺達の順番がきて整理券をもらった。
七海は急いで、二人分の入園券とヒーローショーの券を買って戻ってきた。
「一鍬、急ごう。いい席でみれない。」
半ば呆れ顔の俺の腕を引っ張り遊園地の中に入っていった。
俺達は席についてヒーローョーは始まった。
俺はショーを見るより七海を見ている方が面白かった。真剣な眼差しで応援をしている。まるで子供のようで。
周りの観客の声が黄色く変わった。素顔の役者が出てきたようだ。
七海の眼差しもかわった。まるで恋する乙女のように。
俺はすぐにステージの方に視線を向ける。七海の視線の先の男を見る。そして、七海の耳元で囁く。
「あいつか七海がいっていたのは?」
「うん、は〜やっぱりかっこいい♪テレビでもかっこいいけど、生の方がもっとかっこいい♪」
俺はお手上げ状態になった。今だけのことだ。あんな奴に嫉妬してもしかたがあるまい。
しばらく、素顔の役者の芝居が続いていた。
俺はなんとなく見入っていた。そんな俺の耳元で七海が呟く。
「あの二人、女の子と髪の長い人、なんか戦っている時の私たちみたいじゃない?」
「どういうことだ?」
「お互いに気にはなっているんだけど告白できない」
「そうだな」
俺は苦笑した。そういえば、俺達も同じだったな。ジャカンジャと戦っている時は決していえなかった。好きだとは。
戦いが終わって、やっと思いをいえたんだったな。
「きっと戦いが終われば、俺達みたいにいえるさ」
「そうだといいけどね」
七海はステージの二人の見詰めていた。俺もステージの方に目をやる。ちょっとだけ思う。
『動きが甘いな』
ショーが終わり、俺達はジュースを飲んでいた。
「結構楽しかったな。」
「でしょ?たまにはいいでしょ。こういうのも」
七海は笑いながらジュースを飲み干し、俺の腕に絡み付いてきた。
「これからどうする?」
俺の顔を下から覗き込む。俺は意地悪そうに七海に見る。
「ショーを見に行こう。俺はあの女が気に入った。」
七海の腕をはずし逃げるように走り出す。
「もう、いじわる。待ってよ、一鍬!」
俺は思った。あの二人、俺達のように思いを告げられればいいな・・・
THE END
この話は後楽園に行く前に書いてしまった話です。
その後、実際に行ってみてほとんど一緒だったので驚きました。