Sleeping Beauty
「きゃあああああ」
「な、ななみ!」
中忍の攻撃を受けた七海は吹き飛ばされた。
俺はすぐにでも七海のそばに行きたかったが
ジャカンジャの攻撃を受け、いけない。
後から来た3人と共にどうにか中忍を蹴散らし俺はまだ倒れている七海のそばに駆け寄った。
攻撃の衝撃で変身が解けた七海を抱き上げる。
左腕からは血が出ているがたいしたことはないようだ。それを確認すると俺は彼女を揺り起こす。
「七海、大丈夫か?おい」
七海はゆっくりと目を開け、すでに変身をといていた俺を見上げる。何時もとは違う眼差しで。
「あなたは誰?」
「俺が分からないのか、七海!」
「七海?それって私のこと?」
その言葉を聞いて愕然とした。記憶がなくなったというのか?3人も顔を見合わせる。
その時チェンジャーからおぼろ殿の声が聞こえた。
「一鍬ちゃん、七海を連れてすぐに戻ってき」
「分かった。七海立てるか?」
「は、はい。」
七海は立ち上がろうとしたが、やはりまだダメージが残っているようで倒れそうになる。
そんな七海の右腕を捕まえて抱き上げた。
「大丈夫か?ちゃんと捕まっていろ。」
七海は少し驚いていたがかまわず俺の首に腕を回した。
俺たちは急いで研究所に戻る事にした。
研究所に戻って来てすぐにおぼろ殿は七海の腕の治療と脳の検査をし始める。
俺たちはその様子をただ見ているだけしかなかった。
しばらくして、検査が終わった七海をソファーに座らせる。両隣には鷹介と吼太が座り彼女を心配そうに見詰めている。
俺と兄者はおぼろ殿に検査の結果を尋ねた。
「どうだった?」
「腕の傷はたいしたこと無い。ただ・・」
「ただ?」
「さっきの戦いで受けた衝撃で一時的やけど、記憶喪失になってしもうた。」
<BR>
やっぱりと我等兄弟は顔を見合わせる。そのまま俺は七海に視線を流す。
鷹介と吼太にも聞こえたのだろう。鷹介は色々と七海に話し掛けている。
しかし七海は頭をたれて左右に振るだけ。その様子を見ていた兄者は鷹介を戒める。
「やめろ、鷹介。七海が疲れるだけだ。」
「そうだよ。鷹介もうやめよう、そんなにいっぺんに言ってもかわいそうだ」
「だってよー・・・分かったよ」
鷹介は口惜しいように兄者と吼太に言う。兄者は頭を返し
「おぼろ殿、一度七海を家に帰して体を休ませた方がよいのではないか?」
「そやね。一甲ちゃんの言うとおりかもしれんね。」
おぼろ殿は俺を見て
「一鍬ちゃん、お願いするわ。七海を家まで送ってやって。」
俺は言われなくてもするつもりでいたが、そんなことは顔には出さず、頷く。
座っている七海の肩に手を置き、
「行こうか、七海。」
七海はほっとした様子で俺を見て頷く。俺は七海を連れて研究所を後にした。
アパートに行く道すがら俺は色々と話した。
ハリケンジャーの事ゴウライジャーの事、ジャカンジャと戦い、地球を守っている事。
しかし七海は、まるで人事のように言う。
「じゃ、私はこれでそのハリケンブルーというのになって一鍬さんと地球の平和を守っているんですね?なんかすごいですね。」
ハリケンジャイロを指差し、まじまじと見る。俺は無言で頷き、七海の先を歩く。
七海は俺の肘を引っ張って俺を呼び止める。
「あのー一鍬さん?一鍬さんでいいんですよね?」
「ああ、なんだ?」
「私と一鍬さんは付き合っているんでしょう?」
「どうしてそう思う?」
「一鍬さんといると、なんというか、心が落ち着くというか・・」
「無理に思い出さなくていい。」
俺は心にも無い事を言ってしまう。本当は早く俺たちの事を思い出してほしいとも思っているのに。
俺たちは七海のアパートに着いてドアに手をかける。しかし鍵がかかっている。
七海は何時もだったらしないような困惑した顔で俺を見る。俺は、七海の着ているジャケットの右ポケットを指差す。
「そこに鍵が入っている。出してみろ」
七海はポケットから鍵を取り出し、俺に渡す。七海は少し笑いながらbr>
「よく分かりましたね」
と俺を見る。
「ああ、何時も見ているからな。お前の癖ぐらいわからないでどうする。」
扉を開け、俺は七海に中に入るように促す。
「これが私の部屋なんですか?」
自分の部屋なのにはじめて訪れたように大きな瞳をきょろきょろさせながらいって中に入る。
何回も訪れた愛しい人の部屋。何時もながらきれいに整頓してある。少し感心をしながら俺も中に入る。
俺は七海のジャケットを脱がせ、軽い食事をとらせた後暖めたミルクを飲ませる。
「それを飲んだら、今日はもう休みといい。」
「あ、はい。あの一つ聞いていいですか?」
「なんだ?」
「私ってどんな人ですか?」
「どんな人って。そうだな、まず負けず嫌いでおっちょこちょいで。そして・・」
「そして?」
「いや、なんでもない。もう休め」
七海は恨めしそうに俺を見る。俺の言いかけた言葉『俺が愛している女』。でもこの七海には言いたくなかった。
姿かたちは同じでも別人の七海には。
七海はベッドのそばで古ぼけた絵本を見つける。それを手にとりLげる。
「Sleeping Beauty♪」
「なんだ?」
「日本語で言うと、んーそうですね、眠り姫」
ああ、七海が以前好きと言っていた童話だ。確か『呪いで100年間眠りつづける姫が王子の口付けで目覚める』って話だよな。
『王子の口付けで目を覚ますなんてロマンチック』といっていたな。そういう記憶は残っているというのか?
「すごく好きだったという事は分かるんですけど・・・」
七海はこめかみを押えて考え込んでいる。そんな七海から本を取り上げ、ベッドに横にさせる。
「もう何も考えずに寝ろ、俺は帰るから」
体を出口の方に向けて行こうとしたとたん、七海は俺の手を捕まえる。
「行かないで下さい。一人だと怖いんです。」
俺の目に必死で訴えてくる。俺はそっと手をはずし、七海の傍らに座る。
「わかった、そばいる。安心して寝ろ。」
あれは改めて七海の手を握り、前髪を掻き揚げる。七海は安心したように目を閉じる。
七海が寝息を立て始めた頃、先ほどの絵本を手に取る。が、すぐに置いて子供のような寝顔の七海を見る。
「今のお前は眠り姫だな」
記憶を無くすという呪いをかけられた美しき黒髪の姫君。この先、呪いをかけられたままなのか。
俺は寝ている七海の桜色の唇に口付けを落とした。
『目覚めろ。呪いの森をさまようわが姫君』
そして俺は七海の横で眠りの森へ落ちていった。
七海が零した一筋の涙も知らずに。
俺は唇に暖かい物を感じ目を覚ます。そこには愛しい姫君の顔があった。
「おはよう、一鍬。じゃなかった、我が愛しのSleeping Beauty♪」
今、俺のことを一鍬と呼んだか。確かめねば。俺は七海の体を起こして、ベッドの上に座らせる。
「お前の名前は?」
「何でそんなことを聞くの?」
「いいから答えてみろ。」
七海は怪訝そうに答える。
「野乃 七海。芸名は野乃 ナナ」
「俺は誰だか分かるか?」
「霞 一鍬。私の大好きな人」
良かった、記憶が戻ったんだ!俺は思わず力任せに七海を抱く。
「一鍬、痛いよ。え、何で腕怪我してるの?」
「昨日のこと何も覚えていないのか?」
「うーんと、ジャカンジャの攻撃を受けて、それからは何も。何かあったの?」
俺は昨日のことを七海に話した。当の本人は少し驚いていたが。
「へーそうだったんだ。記憶を無くした私ってどんなのだった?」
「何時もと違ってしおらしかった。」
七海は俺の首に腕を回し、小首を傾け俺に聞く。
「どちらの私がお好み?」
「もちろん・・・」
俺は七海に口付けをする。言葉なんて要らない。今のお前が一番良いに決まっている。
俺はふと思い出す。
「七海、さっき俺になんといった?」
「ん、Sleeping Beautyのこと?」
「ああ、それって前に言っていた眠り姫のことだよな。なぜそれを俺に言うのだ」
「だって、あんまりにも一鍬の寝顔が綺麗だったから。私が王子様になって起こしちゃいました。」
「Sleeping Beautyっていうのは女だろ。そういうのはちょっと」
「じゃ、Sleeping Beastでどう?」
「何だそれは?」
「眠れる野獣♪」
「野獣か。俺にはその方が合っているかもな。ふっ、野獣なら何をしても許されるな。」
「ちょっと・・」
俺はそのまま七海を倒して口付けをする。心配させられた分をこれから取り戻すと決意した。
『目覚めてくれてよかった、我が愛しのSleeping Beauty』
記憶喪失ネタで書きたかったので書きました。
投稿の方もここまででした。