かんざし〜フリオv蘭編〜


風薫る暖かいと言うかむしろ暑いぐらいの言った方がよい初夏のある日、
フリオと蘭は浅草にある有名な簪のお店に来ていた。

何回も来日を果たしているフリオが珍しく友人に簪をお土産に買いたいと蘭に話し、
多少知識があった蘭が連れてきたのである。
2人は店の中に入り、陳列されている簪を目の前にして話していた。

「ねえ、フリオ。そのお友達は何歳なの?」
「蘭と同じ」
「ふーん。じゃあ、髪の毛の色は?」
「君と同じ、綺麗な黒」

「ふーん」

蘭は簪を見ながら考えあぐねていた。やはり、それぞれ好みと言う物があるから・・・。
そんな蘭の様子に気付いたフリオは見ていた蘭の後ろから話し掛ける。

「蘭、俺の友達 きっと 君と好み一緒。だから蘭がほしいと思ったものを教えてほしい」
「わかった。とりあえず私の好みと黒い髪に合えばいいのね」

蘭は色鮮やかな簪を色々と手に取り、自分の頭に当てて鏡を見る。
フリオはその様子を後ろから優しく眺めていた。

「ねえ、フリオ。これなんかどう?」

近くで他の簪を見ていたフリオに蘭は簪を頭に当てたまま、鏡越しに声を掛ける。
フリオは蘭の後ろから鏡を覗き込む。
蘭が選んだのは花が二つ付いたちりかんざしと言う金属で出来た簪だった。
フリオは苦笑する。他に色鮮やかでちりめんとかで出来ている簪があるのに、
金属の簪を選ぶとは、蘭らしいと思った。

「どう、フリオ」

先ほどから何も言わないフリオに蘭は怪訝そうに声を掛ける。
フリオは慌てて

「蘭はそれが好き?」
「うん、他の物も可愛いけど、私はこれがいい」
「じゃ、それにしよう」

フリオはその簪を蘭から受け取り、店の従業員に渡した。


フリオの買い物が終わった後、2人は甘味どころでお茶をしていた。
蘭はあんみつ頬張り、フリオはコーヒーを飲んでいた。
フリオはコーヒーを一口飲んで蘭に話し掛ける。

「人、いっぱいだね」
「そうね、ここは有名な観光地だからフリオみたいな外国人もいっぱい。そうだ、帰りにお参りしていかない?」

「そうだね。俺も行った事無いから。蘭、どんなことお祈りする?」
「それは内緒♪フリオは?」
「俺も内緒」

お互いの言葉にくすくすと笑い、店を出ておまいりに行った。


翌日、フリオが南米に戻るため、二人は空港に来ていた。
フリオと蘭は出発ロビーで出発の時間までしばしの別れを惜しむ。

「また、お別れだね。」
「フリオが日本に来るの楽しみに待ってる」
「そうだ、蘭」

フリオはかばんの中から桐の箱を取り出し、蘭に渡す。

「え、なに?」

蘭はきょとんとしながらもその箱を受け取る。

「蘭、開けてみて」

蘭はフリオに言われるがまま、箱を開ける。
そこには昨日、自分が選んだはずの簪が入っていた。

「フリオ、これ。お友達へのお土産でしょ。どうして?」

「あれは嘘。本当は蘭に簪を上げたかった。前に健吾に蘭は着物を着ると聞いたから・・・」

フリオははにかんだ表情を浮かべる。蘭は嬉しそうに

「ありがとう、フリオ」

と言って、フリオに抱きつく。
フリオは抱きついてきた蘭の小さな身体をそっと抱きこむ。蘭は顔を上げ、

「今度日本に来たら、着物着てこれをつけて見せてあげるね」
「それ、楽しみ」

場内の放送が出発の時刻を告げていた。
それに気付いたフリオは名残惜しそうに蘭をもう一度抱きしめる。

「もう行く。アディオス蘭」

「うん。アディオス フリオ」

2人は軽い口付けを交わし、フリオは出発ロビーの中に入っていった。

蘭はフリオの背中を見送った。手にはフリオのくれた簪を持って・・・。




他のSSに比べて比較的すらすらと書けました。
外国人だからね、フリオ。こういうネタは書きやすい
でも最後はやっぱり砂糖を加えてしましました(笑)