病気の彼を彼女が看病しよう


「おはよー!!あれ、幸人さんは?」
「まだ起きてこなんだよね。今日は休みだからね、ゆっくり寝てるんでしょ。
あ、俺、ご飯食べたらすぐお仕事に行くから後かたづけよろしく!!」
「はーい」

いない幸人を気にせず、二人は食事を済ませる。そして凌駕はとっとと仕事に出かけてしまった。
らんるは幸人の食器を残しせっせと食べ終わった食器を洗い始めた。

「それにしても遅いな」

時計を見るともう11時になろうかという時間。

らんるは『しょうがいない奴だなあ』と思いつつ、幸人を起こしに部屋へ向かった。

その頃幸人は身体がだるくベッドから起きれないでいた。夕べからなんとなくだるかったが朝になって熱が出てきたらしい。
いつもベッドのサイドテーブルに置いてあるミネラルウォーターもすでに飲み干してしまっていた。
『取りに行くのも面倒だ』とそのまま、眠りにつこうとしたその時、

「おはよー!もう11時だよ」

とらんるの声とともに勢いよく玄関が開く。

「?」

いつもなら『うるさい』とか言われるのにその声も聞こえず、部屋は静まり返っていた。
幸人も『うるさい』とか言いたいところなのだが、熱のせいでそんな気力もない。 「おじゃましま〜す」

らんるはきょろきょろと辺りを見回しながら幸人が寝ているベッドに近づく。
幸人はそんな事は気にせず、うとうととしていた。
らんるはベッドに幸人を見つけると

「幸人さん、おきて」

らんるは幸人をゆすっておこそうと身体に触れると熱いのに気がつく。
笑顔だったらんるの表情は一変し、

「幸人さん、大丈夫?」
「大丈夫じゃないから寝ているんだ」

らんるは幸人のいつもの憎まれ口に少し安堵する。

らんるは躊躇なく寝ている幸人の額に自分の額を当てる。

「すごい熱・・・」

幸人は最初目を見開いて驚いたが、らんるの額の冷たさが気持ちよく感じ、目を閉じる。

そしてらんるが離れようとすると

「・・・もう少しこのままでいてくれ」
「え、でも・・・・」
「お前のおでこ、冷たくて気持ちがいい」

幸人の素直な言葉を聞いてらんるは小さく笑う。

「じゃあ、このままでいてあげる」

しばらくらんるは幸人に自分の額を貸した。


しばらく寝ていた幸人はがさがさと物音で目を覚ます。幸人が音の方に視線を向けると
らんるが忙しそうに動いていた。

「もう少し静かにしてくれ」

幸人はらんるに呆れたように言うと自分の手を額に当てる。
そこには濡れたタオルがあり、らんるが置いてくれた事に気付くと小さく笑う。

「ゴメンね、自分の部屋じゃないからどこに何があるのかわからなくて・・・
 そうだ、幸人さん、着替えはどこにあるの?」
「そこの箪笥の中だ」
「はーい」

らんるは箪笥の中からパジャマを出して、お湯を張った洗面器とともに幸人の持って来る。

らんるは洗面器に入っていたタオルを絞ると

「幸人さん、パジャマ脱いで」

らんるは幸人のパジャマを脱がそうとする。

「おい、なにを・・・」

幸人は慌てて、らんるの手を止める。らんるは小さく溜息をつき

「何変なこと考えてるの!体拭いてあげるから脱いでっていってるの」

らんるはまた幸人のパジャマを脱がそうとする。

「わかった自分で脱ぐ」

らんるの手を止め、幸人は自分でパジャマを脱ぐ。上半身裸になるとらんるはせっせと拭きはじめる。
背中、胸の辺りを拭かれ、幸人はすこし妙な気分になったが、一生懸命世話をしてくれているらんるを見て気持ちを抑えた。
拭き終わると、らんるは幸人に新しいパジャマを羽織らせた。
そして汗で濡れたパジャマを持って洗濯機の方へ向かった。
そんならんるの背中に幸人は不敵な笑みを浮かべ

「・・・・下はしてくれないのか」

らんるは振り返らずに

「ばーか」

と一言放って行ってしまった。幸人は残念だなと思いつつ、だるい身体を動かし、着替えた。

らんるが幸人の元に戻ってきた時、両手には錠剤の風邪薬のびんとミネラルウォーターがあった。らんるは寝ている幸人を起き上がらせ

「薬飲んでね」
「いらない」
「だめだよ、飲まなきゃ・・・」
「飲まなくても一晩寝ていれば直る」

と幸人は再びベッドに横になってしまった。らんるは『まったくもう』と腰に手をやり、少し怒っていた。
少し考えて、らんるは風邪薬の蓋を開ける。そして自分の口の中に錠剤と水を含み、幸人の口に自分の唇をあてがい一気に流し込む。
幸人は驚き、目を見開いたままごくりと飲み込む。

「ごほごほ・・・何をする・・」

らんるはにっこりと笑い

「お薬飲めたでしょ、これで大丈夫」

幸人はその行動に呆れていた。らんるはにっこりと笑い、開いていた幸人の目を閉じるように自分の手をあてがう。

「ぐっすり寝てね」

幸人はその手が気持ちよく眠りについていった。


幸人が目を覚ましたのは翌日の朝だった。熱は下がったがまだ身体はだるい。
視線だけを横に向けると自分の手を掴んですやすやと寝ているらんるの顔があった。
幸人は起こさないようにそっとらんるの頭を触る。しかしらんるはその感触に目を覚ます。

「うん、幸人さん目がさめた?」
「ああ、起こして悪かったな」
「ううん、寝ないで看病するつもりだったんだけど・・・」

らんるはくすりと笑う。そしてらんるは立膝を突いて、幸人の額に自分の額を当てる。

「熱は下がったみたいね、良かった」

幸人はらんるの頭に腕を廻し、そのまま深い口付けをする。そして唇を外すと

「水が飲みたいな」

「じゃあ・・・」

らんるはサイドテーブルに置いてあるペットボトルを取るとそのまま渡そうとする。
しかし幸人は

「昨日みたいに飲ませてくれ」

と笑顔で言う。らんるは最上の笑顔で

「自分で飲みなさい」

とペットボトルを幸人の手に持たせて、立ち上がりキッチンへと向かう。
そしてらんるは振り返り、

「お腹すいてない?おかゆ作るね」

ペットボトルを持たされた幸人は

「おかゆはいらない」

とらんるの背中に言う。らんるはその言葉に振り返ると

「何か食べたい物あるの?」

と聞くと、幸人は不敵な笑みをこぼし

「お前が食べたい」

その言葉を聞いたらんるは

「すけべ」

を舌を出してキッチンの方を向いてしまった。
そんな彼女を見て、ベッドの上で声を押し殺して笑い転げる幸人であった。




これは廉さんのサイトに掲載されている『いつものふたり(看病編)』の逆バージョン
『病気の彼を彼女が看病しよう』です(笑)
廉さんがご自分のSSのあとがきの中で切り捨てた場面を書かれていたのでそのネタを拾わせて頂いて書かせていただきました。
廉さんには最初に読んで頂いて、掲載許可を頂きました。(なんせネタは廉さんの物を頂いてますので)
そのお返事メールと一緒に頂いたのが『傍にいて・・・』でございます。
こんな駄文を読んで頂き、SSまで頂いて感謝です(感涙)