一鍬と七海 4 求婚
呼び出された七海は御前の前で頭を垂れる。
「お呼びですか?御前様」
「よく来たな、七海。頭を上げよ」
七海は御前に言われたとおり、頭を上げる。
そこには御前と傍らには御前の従僕のシュリがいた。
「七海、最近美しくなったともっぱらの評判とか・・・」
「・・・いいえ、そんなこと・・・」
七海は御前に言われ、顔を赤らめながら俯く。
「いや、このシュリから聞いた話では蕾のような可愛らしさから今は満開の花のように美しくなった、街でも評判らしいぞ。
七海、好いた男でも出来たか?」
御前は涼しい笑顔で俯いている七海に尋ねる。七海は直ぐに顔を上げ、
「い、いいえ。そのようなことは・・・」
言葉では否定をするが、心はかなり動揺している。
「ところで、七海はいくつになった?」
「19です」
「そろそろ、よい歳だな。どうだろう、このシュリの妻にはならぬか」
「え?今なんと?」
「このシュリの妻にといったのだ。シュリからも是非にと申し出もあった」
御前は傍らにいるシュリに視線を向けるとシュリもはにかみながら答えるように軽く頷く。
七海はあまりにも唐突な御前の言葉に驚く。
自分はすでに一鍬に妻になっているのだ。
しかし、このことはまだ誰にも言えない秘密。
しかし、御前の言葉は絶対だ。
黙って考え込んでいる七海に御前は声を掛ける。
「どうした?七海」
七海は御前の声に我に返ると
「あまりにも急なことで・・・」
「まあよい、出来るだけ早く返事を・・・さがってよいぞ、七海」
そう言うと御前は七海の前から奥の間へと消えていった。
まだ座っていた七海のところへシュリが駆け寄る。
「七海、よい返事を待ってます」
と話し掛け、御前の後を追うように奥の間へと消えた。
七海は御前の前から家に戻らずそのまま無限斎の所へ向かった。
そして、無限斎・朧親子に事の次第を話した。
「どうしたらいいの・・・」
七海はかなり混乱していた。
御前の申し出を断れば家族共々この街にはいられない。
しかし自分はもう一鍬の妻である。
話を聞いて無限斎は閉じていた目を開く。
「七海、その話を受けろ」
七海と朧は無限斎の言葉に驚く。
「なんでや、お父ちゃん!七海がかわいそうや」
朧は掴みかかりそうな勢いで無限斎に反論する。
「まあ、待て。話は最後まで聞け。七海、挙式は出来るだけ伸ばすようにしろ。
そうだな、鷹介達が任務から帰ってきてからといえばきっと大丈夫だろう。
それまでには一鍬も戻って来るだろうて。その時、二人でこの街をでるんだ」
「なるほど・・・時間稼ぎってこっちゃ。だったら七海その事を一鍬にし知らせなあかん」
「は、はい」
七海は言われたとおり、直ぐにこの事を手紙にしたためて、無限斎はこの手紙を自分の配下の者に渡した。
次の日、七海は御前の前にいた。
「御前様、昨日のお話しですが・・・・」
「うむ」
「シュリ様の申し出をお受けしようと思います」
「よく言ってくれた、七海。シュリはよい男じゃ・・・。よかったのう、シュリ」
御前は自分の事の様に喜び、シュリに視線を向ける。笑顔で応える。
「しかし・・・・」
御前とシュリは七海の言葉に直ぐに視線を七海に戻す。
「しかし、なんじゃ」
「はい、お式は私の幼馴染である鷹介を吼太が任務から戻ってきてからにしていただいたのです」
「わかった、七海。シュリもよいな」
「はい、御前のお言葉のままに・・・」
シュリは御前に頭を垂れる。
それから数週間がたつが、一鍬からの返事はいまだ戻ってこなかった。
やっとここまで来ました。