一鍬と七海 3 手紙
まだ夜が明けない時間、一鍬は眼を覚ます。
一鍬は慈しむように腕の中眠っている七海の前髪をそっと撫でる。
そして七海を起こさない様に寝床からでて、脱ぎ捨てた着物を着る。
その気配に気付いたのか眠っていた七海が眼を覚ます。
「もう行ってしまうの?」
一鍬は振り返り膝をつくと優しい笑顔で七海の頬に手を添える。
「ああ、皆が起きてこないうちにここを出なければ・・・」
七海は頬に添えられた一鍬の手に自分の手を添えると、涙を一筋零す。
「・・・・七海」
「どうか、どうか無事に戻ってきて」
一鍬は七海を抱きしめる。
「ああ、必ず戻ってくる。その時にはお前をちゃんと妻として迎える」
「一鍬、手紙を送って」
「ああ、そうする。しかしここには・・・」
「無限斎様の所にお願いすれば・・・」
「そうだな、ではそろそろ行かなければ・・・」
一鍬は後ろ髪を引かれる思いでその場を離れようと立ち上がる。
「一鍬、これを・・・」
七海は一鍬に青い布でできたお守りを渡す。一鍬は渡されたお守りを見ると何かに気付いたように七海を見る。
「七海、これはあの時の小袖・・・」
七海ははにかむように無言でうなずく。
一鍬はそのお守りを受け取るとぎゅっと握り締めると懐に入れ誰にも気付かれない様に部屋を出て行った。
若者達は夜が明けきれる前にそれぞれ任務に向かう為、町を出て行った。
それから二週間後、心の中の一鍬への思いを周囲に気付かれない様に普段通りの生活をしていた七海の元に朧がやってきた。
「七海、一鍬から手紙やて。おとうちゃんが神社に来いって」
それは無限斎から呼び出しであった。
二人の仲を知っている無限斎は自分の娘である朧にすべてを話していた。
朧は最初父親から二人に仲を聞かされた時は驚いたが、あの仮面舞踏会の事を思い出しすぐに合点がいっていた。
七海を小さい時から面倒を見てきた朧は彼女に幸せになってほしいと思い、協力を惜しまなかった。
七海は朧の言葉に笑顔になり、すぐに神社に向かった。
七海は神社に着くと社の扉を開ける。しかし誰もいなかった。
七海は無限斎の姿を捜しながら中に入っていく。
ふと七海が神棚の前に目をやるとそこには手紙が置いてあった。
その手紙の表には『七海へ』と書いてある。
七海はその手紙を見たとたん笑顔になる。そしてその手紙を手に取り、広げ読み始める。
内容は自分の近況を知らせるものであった。
任務は難しいものであるが、絶対にやり遂げ七海の元へ戻ると言った内容。
七海はその手紙を読み終えると愛しいそうに手紙を胸にぎゅっと押し当てる。
そして無限斎が用意して置いてくれた筆を取り、その場で返事を書くとまた一鍬の手紙と一緒に置いてあった所に置いた。
手紙は二人の仲がばれない様にと無限斎が預かることになっていた為
七海は家へ持ち帰らずその場に置いた。
七海は名残惜しそうに社を出て行った。
そんな二人の手紙のやり取りが何度か続いたある日、七海は御前から呼び出しがかかる・・・。
第3弾です。
無限斎・朧親子が活躍してます。