恐れていたのは自分
「しかし、幸人君。今じゃなくてもいいじゃないですか?」
竜之介は少しらんるを思いやるように渋い顔で幸人に尋ねる。
「・・・・今なら・・・」
「今なら、らんるちゃんがそれほど深く傷つかなくてすむですか?」
「・・・・そうだ」
「それは幸人君の方じゃないんですか?」
「どういうことだ!」
幸人はその言葉に驚きの表情で竜之介の顔を見る。
「その言葉のとおりですよ。幸人君の方が傷つくことを恐れている。
このままずっと付き合っていって、いざ別れる時になって傷つくことを怖がっている。
そうとしか思えないですよ」
幸人は竜之介の言葉に反論できなかった。心に竜之介の言葉が突き刺さる。
幸人は俯いたまま、握りこぶしを握る。
「あなた達はまだ若い。傷つくことを恐れていたら何もできないじゃですか。
傷ついてもすぐに立ち直ることができます。幸人君、そんな先の事で恐れてないで
今の気持ちを大事にしましょうね」
竜之介はにっこりと笑うと食事が乗ったお盆を幸人の前に出す。
「これをらんるちゃんに持って行ってください。そして、お互いが納得するまでちゃんと
話し合うんですよ。そうしないと余計に傷つく事になりますから・・・」
「・・・・わかった・・・・ありがとう・・・」
幸人は竜之介がやっと聞こえるような小声で礼を言うと、お盆を持ってらんるの部屋に向かった。
幸人はらんるの部屋のチャイムを押す。きっと竜之介が来たと思ったのだろう。すぐに玄関が開く。
らんるは玄関の外にいる人物を見て驚きの表情を浮かるがすぐに戸惑いの表情になる。
「・・・・おっさんに言われて持ってきた」
幸人はらんるにお盆を差し出す。
「あ、ありがとう」
らんるは戸惑いながらもお盆を受け取る。お互い話したいことがあるのに言葉にならず、俯いてしまう。
幸人はその状況を打破するかのように言葉を出す。
「・・・・話がある・・・中に入れてもらえるか?」
「・・・ええ・・・・」
二人はらんるの部屋の中に入っていった。
意外に素直な幸人さんになってます(笑)